白い花と魔女~あきこさんのうたよみタロット~

2019年2月11日

wans9

先日、kirari333さんのブログで紹介されていたあきこさんのうたよみタロット。
ボイジャータロットをひき、そこからのインスピレーションでメッセージをくださるというもの。
久しぶりにピンときて、早速モニターにお願いしたのだ。
(現在、モニターは終了している模様です。)

今朝、素敵な物語がメッセージとして届いていた。

ここ最近、特筆すべき特別な体験もなく、気分がハイにもローにもなることもなく、淡々と過ごしていた私の心に、ぐわわっと入ってきた。

ああ、特にセッションを受けなくても、何か特別にしなくても、必要な時に必要なカタチでメッセージは与えられるんだなぁ。

わかっていたつもりなのに、久々の感動で心が動いた。

物語にでてくる古い魔女は私。
そして、娘も私。

今の人生も、過去の人生も、精一杯生きてきた。

必死で生きる術を身につけて
時にはわかったふりをして
時にはあきらめたふりをして
でも、どこかでこの世界を愛おしく思っていて・・・

そして今、好きになれない部分があっても、人から評価されない部分があっても
それを含めてすべて私が生きてきた証。

なんて愛おしいのだろう。
ありがとう。ありがとう・・・

こんなに過去の自分を愛おしく思えるなんて・・・

思わぬギフトに感謝が止まらない。
朝からたくさん涙を流した。

あきこさん、ありがとうございます。

そして、少し長いですが、きっと私のブログを読んでくださる方には
なんらかの共通したメッセージがあるはずだ、と感じたので
物語をそのまま載せておきます。

長いので、お時間のあるときに・・・

~白い花と魔女~

 

むかし むかしの

あまりにも遠い昔のことなので

わたしたちがとっくに行きかたを忘れてしまった場所があります

まだ探している者もあれば もうあきらめた者

そのまま忘れてしまった者もいて

ほんとうは みんな知っていたはずなのですが

誰もがその場所を「知らない」と言うのです

そこは たえず白いひとつの光に満ちているようで

よくよく見ると美しい繭のような しとやかに光るちいさな玉が

ふわふわと揺らぎ 姿を消しては またあらわれ

もつれあったり じゃれあったりしていて 

耳をすましてみると まるで歌っているような わらっているような

折り重なる波音のような 静かなひろがりが押し寄せてきます

それはちいさな光の球・・たましいたちの声なのでした

そこはたましいたちの踊る楽園で

なんにも持たないたましいたちが 

なんにも傷つけられず なんにも有頂天にもならず 

ただ海の波のようにうねったり しぶきのようにはじけたりしているだけの世界でした

いつも何かが起こるのに特別な理由など ないのですが

そのときもそうでした

ふとした弾みで ひとつの美しい繭玉のようなたましいが

ころころと転がり しだいに勢いをつけて

気づけば楽園から飛び出してしまったのです

そこから ひといきに火花を散らしながら網目のような迷路をくぐり 

せまく暗い管を通って 荒く叫びをあげる濁流に呑まれ

ぐあんぐあんと響くらっぱのような大きな音に追われながら

ふいにぽとりと落ちたところは この世界

闇をたっぷりと吸いつくした 真夜中の真っ黒で冷たい土の上でした

 

そこにある年老いた魔女が通りがかり

頼りなげにぼおっと白く光るたましいを見つけました

魔女はもう何百年と生きて「古い魔女」と呼ばれており

お説教が多いけれども 心根はとてもやさしい魔女でした

おお こんな世界に落ちてきてしまって

お前も気の毒な子だね・・

古い魔女はたましいを拾い上げ うちへ連れ帰る道々に

もう くどくどとお説教を述べました

いいかい いちどここへ来てしまったからには そう簡単には帰れはしないよ

ここはね お前が元いた天の国にくらべれば

まったくうまくいかないことばかりさ

すぐに足をとられて 油断すると損をしちまうから

絶えずいつも気をつけてなきゃ いけないよ

お前みたいに世間知らずな顔をあからさまに晒していれば

たちまち 意地悪な奴らにつつかれるに決まっている

わたしがここでのルールを教えてあげるから

よおく お聞き

ここで生きるっていうことは そう悪くはないし

かといって別段 善くもない

差し出された箱に

自分をきれいに畳んでおさめる方法を学んでいくんだ

それがいちばんうまくやる 秘訣さ

何も考えることはないよ ただそうすればいいだけなんだから

でもそのときに 誰でもね ちと変な感じがするもんだ

どうにも言いようのない苦味だったり 妙な渋みだったり

チクチクとどこかを刺すような痛みだったりするかもしれないね

そういう後味の引っかかる何かを 確かに胸に遺すものだよ

何かが間違っているような気がするものさ

だけどね

いつだって正しいことが 決してよ いこととは限らないんだ

だからお前が何かを感じたとしても

その気持ちに声をかけてはいけないよ

じっと見ることもなおさらいけない

そんなことをしたら 世界が崩れてしまうんだからね

ごらん この脆くて危ういはりぼてを

この世界は暗黙の了解というものに必死で支えられているのさ

それに耐えられない者はいつも犠牲になる

だから強くなくちゃあいけない

大切なのは技術さ 私の魔法みたいなね

ここは間違ってもお前のもといた場所みたいに

何もせずぼおっとしていても 許される世界じゃないんだからね・・

そう言って年老いた魔女は あわれなたましいを連れ帰り

年に一度だって火を絶やすことのない暖炉に

ぐつぐつと煮たっていた鍋の中へとたましいを放り込みました

そしてかたい杖でぐるぐるとかき混ぜた後、

「お前もここで生きていくためには 容れ物が必要だからね」

と、そばにあった髪の長い人形をわしづかみにし

また鍋に放り込んで

ふたつを ひとつに溶かしました

そうして たましいは からだを持ったのです

古い魔女は言いました

「お前は 今日からわたしの娘だよ」

 

古い魔女の 痩せぎすの手のように筋ばったお説教を 毎日聞かされながら

娘は育ちました

だけどその言う通りにしていれば

たいていのことは上手くいったし

古い魔女は目尻を下げしわをさらに増やして 娘を可愛がってくれるのでした

たくさんの難しい魔法の呪文を覚えました

つまらない石ころから赤くしたたるリンゴを作ったり

カラスの言葉を話して 何でも命令に従わせたり

土くれをぴかぴかの金貨に換えたり

古い魔女の教えてくれる技術はいつもすばらしくて確かでした

はじめはひとつあたらしい呪文を覚えるたびに

古い魔女は娘を褒め 娘もとても喜んだものでしたが

いつしかやればやるほど できのよさは当たり前となり

そのうち娘は顔色ひとつ変えずに魔法を扱いました

娘はもう 立派な魔女でした

たっぷりとした生地の黒いマントでいつもからだを覆い隠して

月の光に白い頬をいっそう青白く染めながら

夜のうち 黒く冷たい土の上を歩き回り 

かたくするどい杖をコツコツ鳴らしながら 魔法の材料を集めるのでした

ある日娘が いつものように 真夜中の森を散歩をしていると

道に迷ったひとりの旅人と出会いました

闇に溶けた真っ黒な森は慣れぬひとには迷路のようなものです

娘は親切に彼に道案内をしてあげました

娘に手をひかれ 街の入り口まで来たとき 彼はお礼を言いました

「ありがとう、美しい娘さん このお返しをしたいので

 もしよかったらお店が開くのを待って・・今日のお昼でもご一緒にどうかな?」

娘はとてもびっくりして首をふりました

「それはできません、私は魔女だから 昼間に外には出ないのです」

彼もびっくりして娘をしげしげと眺めました

「ほんとうに、ほんとうにあなたは魔女なの?あんまりそうは見えないけれど」

「ほんとうです、わたしは古い魔女の家の子です」

「ほんとうに? 魔女の家に生まれたからといって あなたも魔女だとどうして言えるの?」

「だって 私は魔法を使えるのよ、石をリンゴにしたり、土を金貨にかえたり・・」

「それはぼくもできるよ、ぼくは花を金貨にかえることができる、

 今から街へこれを売りにいくんだ」

彼が持っていたかごの蓋を開けると そこにふわりと甘い香りがたちこめました

街の灯りにほんのりと照らされ 冷めた薄青や やわらかい卵色や 暖炉の火のように燃える赤

思い思いの色をした花たちが 少し眠そうに花びらを開いてこちらを見ていました

「ひょっとしてきみは、魔法を使う ん じゃなくて、じぶんで魔法にかかっているんじゃないのかなあ?」

彼はその中からぼおっと白く光る花 を一輪取 り出し 娘へとそっと差し出しました

「じゃあ この花をお礼にあげるよ。

 これの花言葉はね 真実というんだ・・いつかきみの真実が見つかるといいね」

娘が花を手にするのを見てから 彼はほほえんで背を向けました

その影が街の灯りを辿ろうとするとき、娘は思わず声をかけました

「あの・・・・!」

「なんだい?」

娘は急になんだか どうしていいかわからない迷子のようなこころもちになってしまい

何か少しでも言わないと自分が消えてしまうのではないかと不安になったのです

今にも暗がりに馴染んで消えてしまいそうなその影にすがるようなきもちで問いかけました

「その・・真実っていうのは どこにあるのでしょう?」

「さあねえ、それはきみにしか分からないんじゃないのかな」

「でもわたし とっても気になるんだけれどどうしていいかさっぱり分からなくて

 あの・・とても変なお願いなんですけど、一緒に探してくださいません?」

その影はほほえみを口にためて ゆっくり首を振ったようでした

「申し訳ないけど、それはできないねえ。 それはきっと、きみしか見つけることはできないものだから。」

「あなたはもう、それを見つけたの?」

「いや、ぼくはただ ひとりで旅をしているだけさ なにも探しちゃあいないよ」

「一体どこをめざしているの?」

「今から街に出て、夜明けとともに花を売るんだよ」

「それからどうするの?」

「花が売れたあとに、考えるよ」

「ひとりで、さみしくはないの?」

「ひとりで歩いてきたから、こうしてきみと出会えたんじゃないか。 ぼくはそういうのがいいんだよ。

 そういうきみは?・・ きみは、さみしいひとなの?」

そのことばは 娘の胸の奥のすきまにすっと差し込まれ

しまいこみすぎて待つことも忘れていた小さな箱の鍵穴を探り当てたようでした

かちり かみ合う音がして 箱のふたが開いた気がしました

そして

娘は急に泣き出しました

胸がチクチクと痛み 奥底のどこかがじりじりと焼け焦げているようで

熱くてかなしくて 声をあげて泣きました

古い魔女に教えられた通り ずっとずっと見ないようにしてきたもの

話しかけないように 閉ざしてきたものがあふれ出てきたのです

その痛みに 哀しみに 苦みに

ただわんわん わんわん 泣きました

あまりに泣きすぎて自分の輪郭が溶けてなくなってしまうようでした

泣いて 泣いて・・ 一体どれくらいの時がたったのでしょう

ふと頬にあたたかいものを感じ 気がつくと

暗闇から生まれたばかりのお日様が 透き通った新鮮な光を

何も言わずに届けて来ていて

涙に濡れた娘の頬を照らし ばら色に染めているのでした

「やっと、まほうが とけたみたいだね。。」

声がしたような気がして見ると

旅人の影はもうとっくに消えていて

そこには彼が置いていった色とりどりの花たちが 朝の恵みにぱっちりと目を開けて

かごから顔を出して笑っていました

娘がずっと握り締めていた 旅人がわたしてくれたあの白い花も

すきとおる陽の光を吸って いっそう白く輝き 咲き誇っていました

ーああ、 この色は、 わたしだったんだわ・・

 

娘はすべてを思い出したのでした

はるか昔に たましいの楽園から転がり出たひとつの発光

そしてこの手足や長い髪、 魔法の杖を与えてくれたお母さん・・

 

娘は急に昨日までの自分が 抜け殻になってしまったように感じ

そして新しく生まれた姿を 古い魔女に見せたいと思いました

はずむような軽やかな足取りで 緑のきらめく朝の森を走り抜けて古い魔女の家に帰り着き

息を切らして 「ただいま!」 と挨拶すると

古い魔女は娘に目もくれずにうつむいて言いました

「ついに解けてしまったようだね・・もうお前はわたしの娘ではないよ

 いいからどこへでも行くがいい この箒で、もといた天の国へでも帰るがいいさ!」

低いしゃがれ声を震わせながら 古い魔女がまるで駄々っ子のように投げつけた箒の枝先が

娘の手にあたり 傷をつけて血を流しました

その鮮やかな赤い色に古い魔女は少しはっとして ばつが悪そうにそっぽを向きました

娘は手から流れ落ちる細くくっきりとした血の色をじっと見つめて言いました

「お母さん、 わたしはお母さんからもらったこのからだで生きているの・・

 それが、今のわたしなの。

 ずっとずっとお母さんが守ってきてくれたから、この世界は崩れては来なかったわ!」

娘は手にしていた白く光る花を そっとお祈りささげるように 古い魔女へと差し出しました

 

そして 古い魔女は、 声をあげて泣きました。